いまや医療現場ばかりでなく、介護、農業、教育、健康、美容ほか、さまざまな分野で、
「ホリスティック」の考え方をベースとした活動が活発に展開されています。なかでも、
「ホリスティック栄養学」は、日本でも大きな注目を浴びはじめています。

ナターシャ・スタルヒン ホリスティック栄養学修士 一般社団法人 日本ホリスティックニュートリション協会 理事長

ホリスティック栄養学とは

「ホリスティック栄養学」とは、その名称が示すとおり、ホリスティックの考え方を基盤にした栄養学です。
私たちが、「からだ」「心」「精神/魂」という3つの側面で構成されていること、その3つが互いに依存して機能していること、それぞれのバランスとともに、全体的なバランスを保つことが必要であるなどを前提に、からだ全体が、もっとも効率よく、オプティマル(最適)に機能するために、どのような食物(栄養素)を、どのように摂取していくべきかを、細胞レベル、DNA(遺伝子)レベルから考えていくものです。
こう説明しても、従来の栄養学と、何が、どう違うのか、理解できないかもしれませんね。
私は、「従来の栄養学は食品の側から考え、ホリスティック栄養学は、食べる側の体も心も丸ごと視野にいれて考える」といういい方をよくします。それでもピンとくる人は少ない……。
そこで、テレビの健康番組で裏方をつとめていたときのことを、お話しするようにしています。

従来の栄養学との違い

私は血液栄養分析の技術をもっているので、テレビの健康番組でとりあげる食材が、血液にどのような影響をあたえるのか、視聴者にリアルタイム、しかもビジュアルで伝えることができます。こうしたことから、いくつかの健康番組から声がかかり、手伝いをしていた時期があります。
ある番組で、「イタリアントマトには血液をサラサラにする成分が多く含まれているので、普通のトマトを食べるより血液がキレイになる」。そんな仮定のもと、番組がつくられることになりました。
被験者の一人は毎日イタリアントマトを、もう一人は毎日普通のトマトを食べ、一週間後にどれだけ血液の状態が変化しているかを視聴者に見せる、というものでした。
実験スタート前に、二人の血液細胞の画像を撮影。そして、一週間後、結果を観察しました。さて、どうなったと思います?
当然イタリアントマトを食べた人は、血液がサラサラになっているはずでした。しかし!普通のトマトを食べていた人の血液はキレイに、イタリアントマトを食べていた人の血液は、なんと、ドロドロになっていたのです!!
従来の栄養学から考えれば、そんなことは、あり得ません。イタリアントマトには、“血液サラサラ成分”が多いはずなので……。
しかし、ホリスティック栄養学の観点からすれば、この結果は、あたり前のことなのです。

人の側から考えていく

従来の栄養学は、食品のカロリー、含まれている栄養素やその機能など、あくまでも「食物/食品」を主体に考えていきます。
テレビの健康番組などでは、一般的食品をとりあげて、「○○には、こ~んなに素晴らしい栄養成分が含まれ、△△に効果的!」と、まことしやかに語られます。でも、そこには重要な要素が欠落しています。その食品を実際に口にする側についての考慮が、まったくないのです。
食物にどれだけ素晴らしい成分が含まれ、その成分に素晴らしい効果があることが証明されていたとしても、それを口にする人すべて、誰の体にも同様に作用するわけではありません。
それを口にする人の体質、これまでのライフスタイル、ストレス度や精神状態、消化能力や吸収率、その他多くの要素によって、同じ食品を口にしても、それが体にとってプラスに働く人もいれば、マイナス作用をおこしてしまう人もいるのです。
ホリスティック栄養学では、こうしたことを考慮しつつ、あくまでも「人」を主体に考えます。食する側の体の状態、心、あるいは精神状態などの影響なども考えつつ、何をどれだけ、どのように摂れば、その人にとってベストであるかを導きだすのです。

正しい情報を選択するために

今の時代、テレビ、ラジオ、雑誌にインターネットなど、どこもかしこも健康情報で溢れています。情報が多くなればなるほど、何が正しく、何が間違っているのか、判断しづらくなります。目先の情報に惑わされ、健康レベルを低下させてしまうことにもなります。
健康レベルの向上を目指すには、正しい情報を選択するための栄養学的知識が不可欠です。体内の細胞内外でおこっていることを、栄養素と関連づけて正しく理解できるようになれば、誤った健康情報に振りまわされることなく、最高の健康を目指すことができるようになります。
この紙面では、ホリスティック栄養学をベースにした正しい健康情報を、今後、少しずつお伝えしていきたいと思っています。
ホリスティック栄養学との出会いが、施術者である皆さまはもとより、患者さまにも、オブティマルヘルス(最上級の健康)と幸せ(ハッピネス)をもたらすことを願っています。

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