未病健康学 の基礎その5【腸内環境】を整えれば、 殆どの“現代の難病”は軽快する

今井 敬喜 内科医・医学博士 NPO法人「世界福祉実践協会」理事長 NPO法人連合「世界健康長寿学会」議長

〈ヒトはヒトゲノムとマイクロバイオゾームが共生する超有機体である〉L.Lederberg

[第一ヒトゲノム][第二ヒトゲノム][Superorganismus]
現代の難病:「がん」と「血栓性疾患」(心臓病・脳血管障害)代表とする〈生活習慣病〉は、生命体の原点【細胞分裂】と【血管の老化】に関わる疾患であります。従って20世紀的“排除の医療”では解決し得ない疾患であることが、漸く周知され始めました。即ち、外からの“病的細菌”による伝染病を初めとする感染症には、抗生物質などの殺菌剤による排除の医療が効を通しましたが、生体自らの根源《細胞分裂と老化》に関する疾患、例えば「がん」や「動脈硬化性疾患」などには、抗がん剤による絨毯爆撃や手術等のように、いたずらに殺戮・排除を繰り返しても根本的治療には程遠いことが了解され始めました。
〈今【第三の医療】即ち、自然治癒力を高める『免疫療法』が登場し期待されています〉
【免疫】とは、読んで字の如く「疾病」を免ずる、即ち病を防ぐ生来の力「自然治癒力」です。
〈人間を初めとする、全ての生物に生来自然に備わった【生体防御能力】を意味します〉
現代人は、免疫といえば「リンパ球」と考えるように訓練されていますが、実はその前に【第一線の防衛部隊】が、私たち人間の健康を護っていることを知ることが大切です。即ち太陽系宇宙の申し子(Microcosm):私たち人間の身体を構成する60兆の細胞統合体(個体)は、それ単体で生きているのではなく、取り巻く大宇宙(Macrocosm)と接する部分:皮膚や粘膜には2000兆にもおよぶ微生物(Microbiosome)が共生してマントの様に個体を被い、私たちを宇宙の脅威(Stress)から守っているのです。特に、第二の脳といわれる腹部:腸には400種類1500兆個にもおよぶ【腸内常在細菌】が共棲し、一種の生態系(Biological Flora)を形成し、私たちを宇宙からの全てのストレスから防禦する〈第一線の防衛部隊〉の役割を演じています。
地球史の38億年前、強酸性の深海で生物が誕生しました。この原初の生物は、細胞内小器官を持たず、核酸が細胞内にばら撒かれた状態の単細胞生物で【原核生物】と呼ばれます。「ミトコンドリア」を有さず、無酸素状態で“解糖反応”を営み“無糸分裂”で盛んに増殖する生物です。現存するものは「細菌類」とプランクトンの一種「藍藻類」(シアノバクテリア)です。これらの生物のDNAには原初からの地球史の記憶が継代記憶されていると考えても良さそうです。
この地球原初からの(地球型)生物は原始地球の過酷な環境を生き抜き、今でも海中に「浮遊生物」として、陸上では【土壌内細菌】として継代生存し続けています。そして、この一部が、多細胞有核生物(Microcosm)の大宇宙(Macrocosm)と接する部分に棲みつき、一体となって「生物共生体」を形成し生を営み続けています。今から200〜600万年前、この地球上に登場した新参者の「人間」では、大宇宙と接する皮膚や粘膜に共生し【常在細菌叢】を形成し、人間の『第一線の防衛部隊』としての役割を果たしています。

この中でも特に体表面積の20倍もの広さを持つ腸粘膜には400種類1500兆個にもおよぶ細菌(Microbiosome)が共生し、腸内常在細菌叢いわゆる【Bacterial Flora】(腸内の花園)を形成し、究極地球史の記憶を現在に生きる人間に伝えているとも考えられます。
生体側では、腸粘膜のパイエル板にある樹状細胞「M細胞」(Microfold Cell)が、この細菌の情報を取り込み、体内のマクロファージに伝え、次々と〈免疫担当細胞〉を伝わり、究極「リンパ球系」に伝えられ《免疫反応》が作動されることになります。(腸粘膜には全身リンパ球の70%が集結し、一人前のリンパ球に育てられていると考えられます。この意味で、腹部とくに腸は【生体最大の免疫器官】であり、腸は第二の脳(Second Brain)を超えた【母なる脳】と言えるのです。この腸粘膜の親戚である【胸腺】でも一部のリンパ球は一時期育てられ「細胞内免疫」を司る【Tリンパ球】に育てられていることは良く知られた事実です)
〈腸は免疫担当細胞の体内最大の訓練場であり、腸内細菌は最良の教師である〉
このように考えると、「腸内環境」を整え、善玉菌・日和見菌・悪玉菌の共生する腸内生態系を適正に維持することが、「がん」を初めとする“生活習慣病”その他、現代の難病を治癒に導き、更に糖尿病や膠原病など自己免疫疾患や神経筋疾患、心の病やうつ病を初めとする精神疾患など全ての〈疾患の予防〉に如何に大切なことかが理解されましょう。(現代科学の発展の陰の部分“微生物の大量殺戮”の弊害が、私たち人間の健康の維持に危機をもたらしていると言ったら言い過ぎでしょうか?ここでも地球の生態系を乱し続けた「人間の罪」が因果応報、人間を侵す現代病の脅威となって人類の未来に暗い影を落としていると解釈されます)
抗生物質・放射線療法や手術万能の20世紀型“排除の医療”を超えて、生きとし生けるものが、その生態系を生物共生の理念で生き抜く“共生医療”の時代へと、一日も速く脱皮することが、今の混沌とした高度高額医療に未来を開くことになります。共生社会の実現は国家目標にもなっています。心して「健康長寿」を自身の手で実現しましょう。

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